築15年の賃貸マンションの結露
これは旧ブログに2006年10月に5回に分けて投稿したものを
読みやすいように(結露発生から原因解明、解決策までを)一つにまとめてあります。
築15年の賃貸マンション結露のリポートです。
躯体はALC100mmで室内側から現場発砲ウレタンがおよそ25mm程度吹きつけられています。
サッシは外部がアルミサッシの単版ガラスで室内側が後付の気密型PVCサッシの単版ガラスです。
局所換気がトイレ14m³の排気、ユニットバス36m³の排気、洗面所には22m³の強制吸気です。
暖冷房エアコン1台備え付けられていてFFヒーターはなかったが使った形跡がありますがよく問題となるファンヒーターではありません。

写真で見られるように開口部(サッシ廻り)が一番ひどく、周囲のクロスのジョイントは剥がれかかってカビも発生しています。
その部分を指で押して見ると石膏ボードが柔らかくフニャフニャしています。
そこで石膏ボードを剥がすことにしました。
それが上の写真・・石膏ボードの下地材が黒くカビだらけになっています。
そこに露点温度計で測定します。
温度は12.8℃で湿度は85%~露点温度が10.3度を示しています。
(現在は12.8℃あるもの10.3℃になると結露が発生する環境にあることを教えてくれています.)
温度も低いのも問題ですが相対湿度が人が住んでいないのに異常に高いのです。
その時の外気温は4℃、室温、湿度は18℃で60%ですから外気温が氷点下になると当然測定した場所が温度が降下するのですぐに露点温度に達する環境のようです。

吹きつけられているのであればこんなことはないのですが・・・・・・・?
カビの発生は開口部の周囲に集中しているように見えます。
・・・・がよくチェックをして見ると外壁の外周部のあちこちに点々とカビが発生しています。
どうも開口部だけではないようです。
●結露の原因と対策については↓に続きます。

この部分に露点温度計を入れてみました。その結果はいつ結露が発生してもおかしくない状況になっています。
温度は12.8℃で湿度は85%もあるのですから露点温度が10.3度を示しています。外気温ガ4℃でしたから氷点下になるとこの部分が結露水が確実に出るだろう事が想像されるのです。

ということは・・開口部廻りだけではなく壁全体の胴縁の周囲は同じ状況になっているということになります。
(それであちこちにカビが発生して理由がわかります。)(赤く囲った部分が無断熱か5mm程度の断熱材です。)

ちなみに25mmのウレタン断熱材では結露は発生しません。
●結露計算書の断面図
赤線の部分が結露の発生を示しています。
何故このような施工になったのか考えて見ました。
あくまでも想像ですがウレタン現場発泡の場合は吹き付け圧は相当高いものです。
そのため正面からの吹付け問題ないのですがALCと胴縁の隙間に吹付ける場合は斜め横から、それも近づけて吹き付けしなければなりません。(そのように施工したのだと思います。)
しかし吹き付け圧が高いためウレタン材が飛んでしまい十分にその部分に吹き付けできません。
それで断熱材が0~5mm程度になったのだと思われます。
いずれにしても●カビの原因は断熱材の薄さにあることがわかりました。
それでは、その他の要因ははないのでしょうか?
前段では結露発生の第一の要因として断熱不足であることを突き止めました。
続いてさらに別な要因はないか?を探します。
結露、カビが発生した場合は「窓を断熱性の高いものに替える」と防止できるようなことを勧めている例がありますが、総合的に要因を探さなければ解決しません。住人の住まい方、床、壁、天井の断熱性、換気の設定の有無換気の風量、通風、暖冷房、気密性、間取りと全てをチェックする必要があります。

そこで換気扇の位置と風量チェックです。
換気扇は局所換気がトイレ、浴室についており常時換気ではありません。
そこで局所換気の排気量の風量を測定してみるとトイレ→14m3、お風呂は36m3の合計50m3の排気量となっています。また洗面脱衣室の天井には吸気口(強制吸気)がついていて22m3が吸気されます。
●この現場一世帯の容積を計算してみるとおよそ236m3あります。
シックハウス対策の換気回数0.5回/hにこだわる必要がありませんが今度入居する人数も住まい方もわからないのでそのまま0.5回/hに設定した方が安全かもしれません。
そうなると118m3の排気量が必要であるということになります。
現在の局所換気を常時換気として扱っても50m3ですから68m3の排気量が不足していることになります。思いきって天井を剥がし、第三種の換気システムにしたいところですがリフォーム予算も考えなければなりません。
そこで何処かの場所に局所換気を設置しなければなりません。
(それは何処にするのか・・・悩むところです。)
現況を見る限りには玄関しかありません。居室側に設置する場合がありますがそこに設置したら新鮮な空気を必要とする場所に汚れた空気を引き寄せることになり、健康にはよくありません、あくまでも居室には吸気口を設置したいところです。
さて次に問題点はないのかチェックしてみます。
・・・やはりありました。

これではいくらトイレ、お風呂で常時換気していても空気が動きません。まして居室の吸気口が1個もないのですから、なおさら室内の空気が動くことがないのです。居室が三部屋のドアー全部がこの状態になっています。各居室の空気の入れ換えがないため相対湿度が高いのは当然といえます。
「改善策」
そこで今回の賃貸マンションの結露についてまとめてみますと
●要因は
1・外気に接する壁の断熱材に欠損がある、
2・気密性が高いのにもかかわらず吸気量が極単に少ない。
(トイレとお風呂だけの給気計画になっていて居室の給気計画されていない。)
3・局所換気があるものの排気量が極単に少ない。
4・各部屋のスリットが狭いため空気の流通ができない。
こんな理由で結露が発生してカビを助長させていると思われる。
●そこで下の図面(間取り)に改善方法を示しました。(参考にして下さい。)

1・各居室吸気口を設置する。
2・全てのドアーのスリットを1cm以上にアンダーカットをする。
3・玄関に排気量が68m3前後能力のある湿度」センサー付き局所換気扇を設置する。
(常時作動させていると風きり音が気になるため湿度センサー付とします。定価で10.000円くらい。湿度の設定を少し低めにすることで常時換気に近いものとなる。)
4・既存の石膏ボードを剥がし断熱欠損部分を一液性のハイプレンフォームで充填補修をして石膏ボード+クロスを貼り替える。
最期に後は住まい方に問題が出てくるので居住者にはトイレ、お風呂、玄関の換気扇は常時換気すること。また暖房についてはファンヒーター、反射式ストーブは厳禁としなければなりません。
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