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住まい環境プラニングは国内唯一の高気密性能を担保できる気密施工マイスターを育成する設計事務所です。 高性能住宅の熱環境分野に携わって28年、理論と実体験に基づいて省エネ住宅の開発研究、普及に努めております。住宅に大切な結露対策は得意分野、結露のトラブルも解決いたします。

モデル展示場で起こった大事件!



この記事は4回に分けて投稿したものを引っ越しに伴って、修正、訂正、編集して読みやすいように一つにまとめています。


予め、お断りしますが大事件(結露のクレーム)での実例では2×4工法を取り上げますが2×4工法を非難、中傷するものではありません。在来軸組工法でも同様の問題が起こります。

私は住宅のクレームは当たり前のことですが施工者の意識、知識、経験の希薄さで起こるものと考えています。○○工法だから、いいとか、ダメだと考えていません。どんな素晴らしい工法であっても工事に係わる関係者に意識、経験、知識がなければクレーム住宅が建てられてしまうことです。

73zjawnja1njlfmdmzmzcxyzo.jpg●掲載写真は「イメージです。」
昨年の2月に○○県の名の知れたハウスメーカーの展示場での出来事です。

私の知人の設備業者さんからの依頼です。

「建てたばかりのモデル展示場のすごいことになっているらしいので診てくれないか?」
という電話。

「どうしたの!何?」 「カビだらけらしい」
「何処の工務店?」 「いや○○○○○だ!」
「クレーム「専門のプロがいる会社だから・・そこに依頼したら」
「いや・・・ダメらしい」
「何で?」 「色々やったらしい・・が・・」
「誰かいないかということで住環境アルテさんを推薦したんだけど・・・」

そこで翌日現場に行ってみました。

外観は窓は格子入りのPVCサッシを使って輸入住宅をイメージした豪華な50坪くらいのオール電化住宅です。
断熱仕様は天井(GW18kg/300mm厚)壁GW18kg/m3で100mm、天井、壁とも防湿シート0.2mmで気密、防湿を施しています。基礎は基礎の外側にスタイロフォーム50mm(B-3)断熱、土間床工法(土間下は全面スタイロフォーム(B-3)を30mm敷き込んでいます。気密性能は0.1cm2/m2ですから抜群の気密性能です。玄関に入ると担当営業マンが説明のため待っていました。

リビングで状況を説明をしてくれました。
(ザーッと見たり、嗅いだりした感じではカビの匂いはしません。)

「カビの匂いと聞いてきたけど匂いしないけど」
「床下です。カビ臭くて・・それとカビだけでなく土間全面が水浸しなんです。」
「エッ!」
キッチンの床下収納庫を開けてビックリです。確かに全面鏡面状態になっています。

「いつ、わかったの?」
「契約までこぎつけたお客さんに・・高気密高断熱だから床下も室内と同じ環境なんですよ!」
と説明をして、この床下収納庫を開けたらカビの匂いが凄かったんです。

その時に床下の土間には今日のような水が(鏡面の状態のこと)そんなになかったのですが、会社のクレーム担当課に来てもらったら、工事中に雨が降った時の雨水が若干残ったの原因だということで、カビを除去し土間の水を吹き取ってみたがが・・・1ヶ月後には前よりひどくなったのです。」という経過です。

続きます。↓


何故?結露したのか・・・考えます。

すでに土間面がしっとり濡れた状態です。数ミリ程度の水が土間全面に張った状態になっています。2月のことですから基礎からの雨水の浸入は考えれません。

結露しか考えようがないのですが原因を探ります。

1F~2Fの温湿度環境も調査します。暖房(蓄熱暖房器)がほどよく効いていて暖かさには満足いく環境になっています。窓(PVCペアガラス)にも表面結露は発生していません。

74zjawnja1njlfmjmzmzu0nsc6y9wmqro.jpg換気システムの風量測定もしましたが0.5回/hはクリヤーしています。(ハテハテ・・・と少し困りました。)

一応、1F(2箇所)、2F(2箇所)床下(2箇所)外部(1箇所)に温湿度記録計を設置するもののすでに床下は結露している状態ですから、少しの温度降下では常に結露する状態です。この状態で調査しても「結露は結露を呼ぶ」ため原因の究明に難しさがあります。その時の室内の温湿度は22℃/60%になっています。

第三種換気装置のわりには高い感じです。(一般的には第三種の場合は50%を下回ります。)
生活には理想的な相対湿度なのですが・・・・・
では床下はというと20℃/90%になっています。(露点温度は18℃です。)

そこで床の表面温度を測ってみますと20℃床下が18℃以下にならなければ結露は発生しないことに理論的にはなるのだが何故?(苦悩が続きます。)

24時間暖房のオール電化住宅で、モデル展示場ですから日中は営業マンと数人の展示場見学のお客様が訪れるくらいです。お風呂も台所も、トイレも使っていないのですから室内に水蒸気を発生させる要因は見当たらないのです。

そこで、この状態で3日間(1時間毎の平均で24時間)を温湿度計で調査することにしました。

○○○○○の営業マンと担当建築部長が

「どうです。原因、わかりました?」「床下が密封状態だからですか?」

「この基礎断熱工法初めてですか?」「いや、最近はほとんど、この工法ですがクレームはありません。」
「ここだけです。」
心配になって他の展示場も床下をチェックさせましたが、湿度が高いものの結露はないんですよ。」
「何時建てた住宅を見たんですか?」「1年前のものです。」
「このモデル展示場と同時期のものはあります?」「いや・・・ここだけです。」

と言った会話があって4日目に再度調査することになって帰宅です。


4日目再びオール電化住宅にお邪魔です。

床下の環境は相変わらず4日前と同じ状況になっています。土間の水は増えたような気もするし。変わらないよう気もします。設置した記録計を取り外して事務所に戻って調べることにしました。

75zjawnja1njlfmtuxmduzmjfklq.jpgその方が手っ取り早く、温湿度の変化の状態がわかり原因究明の手がかりになるからです。
1時間毎の温湿度データーグラフ(参考)と詳細の時間毎データを基に検討します。日中は快適な室内環境には変わりはありませんが夕方6時頃から温度が序々に低下し始め翌日朝10時頃には再びいつもの温度に戻ります。

(何故?)

24時間暖房なのに・・・不思議です。
(性能が悪いのか?)

考えられることは暖房を止めているのかも・・・?と考えるのが妥当です。

そこで電話で営業マンに確認です。
「展示場の件でお聞きしたいのですが、もしかしたら夜は暖房止めていないですか?」
「はい!止めていますが・・それが何か!」
「冬ですからオール電化住宅であっても、朝は寒いでしょう!快適な環境は午後からじゃないですか?」

「は~・・そうですが・・」
「何で止めてるんですか?」
「上司が電気代がもったないから止めろとの指示なんです。」
「やっぱり、そうでしたか。」
「そのことが原因なんですか?」
「それも要因の一つです。」
「でもお客様で夜は止めているところが多いですが別にクレームはないですが?」
この営業マンの話で日常の住まい方(使い方)が見えてきました。

結露を発生させる要因にこの使い方が大きく関係しているようです。
床下の結露発生前の温湿度環境は今ではわかりませんが、次のように考えることができます。

●日中は室内側で暖房器を運転で22℃の温度を保っている熱がが床下空間に(特にコンクリート部分は温度が低いため)移動する。暖房器がないものの日中はゆっくり蓄熱されて温度が上昇する。その温度は日中20℃に達する。
またコンクリートと木材は初年度の含水率が多いため、暖められることにより水蒸気が床下空間に放出され相対湿度が室内より上がってしまう。冬場の水蒸気は室内から外部に向って移動するため条件が悪いと結露として表れることになってしまう。そこで、果たして計算上でも結露が発生するのかを結露計算をしてみます。

75zjawnja1njlfmjiznzuwnjnh.jpg条件は次世代省エネ基準の気密評定の申請時に計算上設定するⅡ地域の外気温湿度(-4.9℃/74%)床下温湿度は実測の日中の床下の温湿(20℃/80%)を条件として土台廻りの結露発生の有無を計算します。

(左の上の内部結露の分布図:透湿抵抗の比で分割した断面図)すると土台の外気側から内部側に2/3の範囲まで結露が発生することを計算上は示しています。この時の露点温度はおよそ16.5℃ですので床下の土台が16・5℃に降下すると土台の表面に結露として表れることもわかります。

一方、左の下の図は内部結露の分布図:透湿抵抗の比で分割した断面図)は基礎の立ち上がりです。
外側にスタイロB-3(50mm厚)+コンクリート120mmの断面図ですが床下空間が18℃/99%で床下室内側に結露することを示しています。

●結露発生原因(推理)

記録計のデーターによれば日中の床下温度は室内の暖房温度に影響、展示場が休日の場合は少しであるが室内に入る日射で室温が影響を受けている、夜は暖房を止めたことにより室温が低下~と同時に床下も影響を受けて降下している。日中の温度で床下の水蒸気が放出、水蒸気量が多いため、露点温度も高い。少しの温度低下で結露を発生させている。
一度結露が発生すると(その部分さらに温度が低下するため)そこを中心として結露が広がっていくため、その結露は土台から始まり、基礎の立ち上がり、土間となり結果、密閉された床下空間は水蒸気が排出されることがないため、鏡面コンクリートとなったのではないか・・・と推測される。

●このことから床下の水蒸気の含有量(絶対湿度)を室内の絶対湿度と同じくらいに下げることができれば室内温度が高いほど結露には安全であるため、健全な電化住宅仕様であれば3℃前後の温度差では、床下に敢えて暖房器を設置しなくても室内の温度が床材を通して移動する熱で結露の発生を防止することができる。

結露を検討する場合は空気が低温になるほど保有できる水蒸気量が少なくなることに注意しなければならない。



●床下の水蒸気を下げるために行った方法

原因が想定されたことで、正常のオール電化住宅の住環境にリセットするための改善を試みます。

前回の在来軸組工法での床下結露
と同様に、基礎工事~床工事の段階で床下に水分を溜めこんで塞いだためと考えるのが妥当で・・・その改善に挑戦することになったのです。

依頼先の上司からはコストは勿論のこと、展示場であるため目立たない方法で早く修復して欲しい旨(難しい問題です。目立たないようにということは夜中にやってほしいということ?そりゃ、無理な注文)

どのくらいの日数で直るのか?も尋ねられたが
「1ヶ月は必要です。」
と答えると3日でやって欲しいとの要望。(この上司大変なことわかってないじゃないのか?)そんな気持ちを持ちながら工程の説明です。

その工程は以下の通りです。
1・床下土間の鏡面状態になっている水を原始的であるが人海戦術でぞうきんで搾り取る。
(見た目でコンクリート面の水がなくなり、濡れている状態まで)

2・木材のカビはそのままで除湿器を床下に4台入れて除湿する。
(除湿器は除湿する時に暖かい温風を出すので多少の暖房の役目も果す、一石二鳥の道具となる。)

カビ取りは床下の湿気が少なくなってから行う。)

3・扇風機2台で床下の空気を拡散させながら除湿する。

4・蓄熱暖房器のスイッチは24時間ONにしておく。

5・換気装置はそのまま稼動させておく。

この方法で10日くらい様子をみることにします。・・・・・と説明

すると依頼先の上司「そんな原始的な方法じゃなく、大型の除湿器とか何かあるだろう!手っ取り早い方法はないの?」「ありますが・・目立たないように、またコストがかからないように・・・無理ですね!手l取り早いのは基礎に穴を開けて換気扇をつける。また床下にFFヒーターをつける、それから・・・・」
「それじゃ、近所に目立ってしまうからダメだ!」とのやりとりがあって地味な方法で開始することになったのでです。

●1段階
アルバイトのおばちゃんを5人雇って、防塵マスクをかけて雑巾とバケツを持って、床下に潜り、結露水を拭き取ってはバケツに絞る、拭き取ってはバケツに搾り取る。この作業の繰り返しを行います。。

1日目はこのおばちゃんのお陰で床面は鏡面から濡れた状態まで回復。その後、除湿器を点検口の反対側に設置して、点検口を中心にして扇風機2台を首ふりにして床面向けて回します。

こうすることで、室内の乾燥した暖かい空気を床下に送ることで、滲み込んだ水分を床下空間に排出させて除湿するという気の長い作業となるのですが・・・案外効き目があるのです。除湿器のタンクの水溜りの様子を夜の11時ごろ見ることにして一日の作業は終わりです。

それから
この繰り返しが1週間続けることで床面が濡れた状態から白く乾いた状態になった所で次の段階に入ります。

●2段階
第三種換気装置の本体はユニットバスに上にあります。隣が洗面脱衣室なのでそこから分岐して、パイプシャフトを作り配管を通して、床下に吸気口の配管を設置します。幸い排気能力が大きいモーターでしたから分岐しても0.5回/h以上の排気は確保されます。

次に扇風機を止めてカビの除去を(専門会社に依頼して)します。この段階で給気口として点検口を使い、隙間を少し開けておきます。(室内の空気を取り入れるためです。)

この状態を温湿度センサーで温湿度を確認しながら、(およそ1週間くらい)外気が冷え込む朝方でも床下温湿度が20℃/60%が維持されることを確認した上で、床にガラリを長さ30cmに切り、指定した5箇所に取り付け室内の空気を床下に送り換気システムで排出します。

この状態でさらに1週間様子をみます。(確認は露点温度計で確認します。)

●これで完了です。

※昨日、この現場にその後の状態を検査してきました。
現在我が家の床下は22℃/70%(露点温度14℃)ですが展示場は21℃/65パーセント(露点温度14℃)と」同じでしたので快適な床下空間修正されたと判断します。。

いずれにしても、
前回の在来軸組工法と同じく、施工での(基礎から~床)ミスが大きな原因となり、住まい方にも問題があった結露発生の例でした。高気密高断熱住宅は「暖かい、涼しい家」として宣伝されますが、本来の高断熱工気密住宅の目的は内部結露を発生させないため耐久性が増す住宅なのです。

その結果として
暖かい、涼しい住宅」となっていることを理解しなければなりません。


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住まい環境プランニング(同)
(高性能住宅設計:技術顧問)

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