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住まい環境プラニングは国内唯一の高気密性能を担保できる気密施工マイスターを育成する設計事務所です。 高性能住宅の熱環境分野に携わって28年、理論と実体験に基づいて省エネ住宅の開発研究、普及に努めております。住宅に大切な結露対策は得意分野、結露のトラブルも解決いたします。

新築1年後に起きた大結露(結露調査の実例1)



この記事は旧ブログで4回に分けて投稿したものを引っ越しに伴って、修正、訂正、編集して読みやすいように一つにまとめたものです。



実例1●在来工法の気密住宅での床下結露

在来工法、外断熱工法、気密性能0.2cm2;/m2基礎断熱ベタ基礎(床断熱はなし)基礎換気口なし、第三種換気システム、暖房は1FにFFヒーター(1台)と2Fに暖冷房エアコン(1台)

dc012004(修整1)■経過:着工は12月で完成は3月中旬、引渡しは4月
翌年の6月末にお住まいの奥様から畳下にカビ、トイレ、流し台付近でカビ臭いということから調査開始。

床下に潜ってみると水廻り付近が特にひどく、北側の廊下付近の土台、根太にカビが発生して居間(南側)には土間コンクリートのコーナー部分にうっすらと濡れた部分がみられた。。

温度は20℃で相対湿度は90%を示し、サウナに入っている感じで、露点温度は18℃、長期の温湿度計を設置して1週間様子をみることにしました。1週間後再び訪れて床下を見ると土間床部分のうっすらと濡れている部分が広がっています。当然居室もジメジメした環境になっています。
(昔の隙間だらけの住宅の梅雨時の室内の環境と同じです。)

換気の風量はきちんと0.5回/hで正常に稼動しています。
2Fの寝室にはエアコンがあってドライでかろうじて生活できる状態です。

■原因の特定(究明)
データーを基に結露によるカビの増殖と考えてたのですが、結露を発生させるだけの水分(水蒸気)が何処からか発生しているのか、なかなか探し出すことは困難でした。
目視だけでなく着工時の天気状況を現場監督から聞き取り調査することにしました。

そこで、意外なことを聞くことができました。

(基礎の天端ならしの時は小雨であったこと、養生期間を1日だけ置いて柱建てをしたこと。尚且つ中間検査を早めるため(工事代金の早期回収のため)屋根を葺くまでを短期で施工したこと。その間幾度か雨が降り、土間にも水が溜まって拭きったとこともことが判明しました。

●ここで原因を推定
原因なのですが以下のように結論づけをしました。
大きな原因は小雨の中の柱建てで基礎コンクリートの中に水が滲みこんでしまったこと。そのご乾燥期間を十分置かずに気密化工事をしてしまったこと。
気密性能が0.2cm²/m²ですから超高気密となっています。

全部の隙間を合わせても0.44cm×0.44cm角の隙間しかないということになります。
密閉された状態でクロスを貼る時には乾燥させるためにジェツトヒーターを使用したこと。
(灯油を燃やした分だけ水を撒き散らしたと同じになります。)

引渡しは4月ですから・・・換気の正常稼動はここから始まっています。また4月ですので暖房は未使用で生活のスタートです。その年の冬には当然のように暖房開始です。

施工期間中に基礎の土間、柱、石膏ボード等の建材に滲み込んでいた水分が暖房したことによって一気に室内に放出されたのです。その場合は先ず最初に結露として現われる箇所は床下なのです。(理由は非暖房室のため)

もちろん暖房する前の期間も床下は少しずつ結露が出始めていたことが想像されます。春、夏、秋においては換気システムだけでなく、窓を開けたり、閉めたりの生活をします。換気回数は0.5回/hから1~2回/hの環境になります。住んでいる方は気がつきません。

しかし床下は2×4工法と比較して床下と壁の中は通風するにしても駆動ファンがないため空気を移動させるには微々たるものです。

●調査報告と改善策をを工務店の社長に提出、しかし、社長は結露ではないと言います。

そのやりとりの会話と解決までの話は続きます。


dc012113 -  (2)工務店社長「今まで同じ工法で施工して床下に結露は出たことがない。結露ではなく基礎の周囲から雨水が滲み込んでいるようだから基礎周囲に暗渠を作れば解決する。」ということで・・・・私の役目(仕事)はここで終了です。

確かに梅雨時でもあり、社長が現場を見た時は大雨だったのです。
それから現場監督に暗渠工事の指示をしたのです。

私は結露であろうと言った手前心配で現場をちょくちょく見ることにしました。
2日かかって暗渠の完成です。

60z2irz47kkf4rng.jpg雨も大雨から小雨になり快晴が4~5日続き雨水の浸入ももうないだろうと思われる頃現場に行って見ました。

現場に着くとお住まいの夫婦と工務店側3人で「あ~だこ~だ」の言い合いがあってもめている雰囲気です。・・・・そうです。

雨水の浸入ではなかったのです。
「それでは何なんだ?」とあれだこれだの大騒ぎになっています。
気密性能がよすぎるからだとか、水道の配管工事にミスがあるのではないかと・・理由を話し合っています。

(気密性がよいから・・は論外にしても配管状況は前回チエック済みでOKなのです。)

すると現場監督は社長にとんでもないことを提案したのです。
「社長~基礎に強制的に換気口(パイプファン)をつけて床下の湿気を掃き出したら解決しますよ!」・・と現場監督の言葉です。


「お~それはいい考えだ。何で当たり前のことじゃないか・・・それ・・・それでいこう」という会話です。

私は咄嗟に「社長、それはまずいですよ!」と言うと迷惑そうな顔をされてお前の意見は聞かないという雰囲気でです。断っておきますが、最初は私が調査して・・どうして続けられなかったかという疑問が出ると思います。
それは原因の調査には調査料金がかかるからなのです。
クレームであったことを考えて少ない料金にするため現場立会の時間給にしたのですが)


ところで、原因は何か?
そうです。・・・この時はムンムンムレムレの梅雨時なのです。
外気湿度は90%以上なのです。
吐き出すどころか常に結露を起こす外気を入れると言うことですから馬鹿げています。

北側に3個のフード付給気口を基礎の立ち上がりにつけて、南側に3個のパイファンをつけたのです。

第三種換気装置(スイッチを強:0.6回/h+パイプファン40m3×3=120m3/hをこの梅雨時に入れるのですから外気と同じくなり、以前より室内環境をさらに悪化することが想像されます。



梅雨時に基礎の立ち上がりに穴を開けて3箇所の給気口をつけて3箇所の排気のためにパイプファンをつけて・・・3日様子を見ることにしたようです。
忙しさもあって、忘れかけそうな1週間後に工務店の社長ではなく担当の営業マンから夜8時頃携帯に着信です。

「申し訳ありません。すぐ例のクレームの現場にお願いできますか?」「明日じゃダメ?」「すみません今お願いしたのですが・・・」非常に困っていることが暗い声のトーンでわかりました。

62zjawnja1njlfmzgxmze3avc.jpg玄関に入ると室内環境は凄いことになっていました。想像していた以上の現象が起こっています。
数多くの結露をみてきましたがこんなにひどい状態は初めてです。

床下どころか1Fの部屋がジメッ~としていています。(サウナに入ったムカムカした環境です。)それよりも驚いたことは2Fの天井が雨漏りのようにシミができて濡れています。小屋裏に上がって見ると換気のダクト(スパイラル管)も結露しているのです。ダクトの周囲グルリと汗をかいた状態です。それがポタッポッタと天井に落ちているのです。

床下だけではなく基礎、室内を外気と同じ環境にしてしまったため全体に広がってしまったのです。
ここでも社長は今度は「屋根から雨が漏っている」と判断したようですがご夫婦が不信に思い私の意見を聞くために呼んだようです。

ご夫婦は私に「雨漏りですか?結露ですか?意見を聞かせて下さい。工務店の社長が言っていることは逆なような気がして治るどころかますます悪くなっています。」
「解決できますかか?」「努力はしますが期間が必要です。」「どのくらい?」「2ヶ月は必要と思いますが生活している状況では無理です。」「何でです?」「サウナ状態の部屋で眠れないでしょう。」
「・・・・・・・」「2ヶ月くらいアパートに仮住まいをしてもらわなければならないと思います。」

それから工務店と話し合いの結果、翌日からアパートに引っ越すことして結露改善に向けて再び挑戦することになったのです。



ご夫婦は工務店夫社長に担当の現場監督を外して、担当営業マンと私が手直しの現場管理をすることを要望。理論的には知ったつもりでも、これだけの結露対策は初めてのことであり、正直お断りしたいのが本音です。

工務店からは「費用がかからないように対処して欲しい。」との施主様おざなりりの金計算ですからうんざりします。しかし、一応その道の自称プロですから・・・解決しなければなりません。
現場監督するにしても職人の手配もしなければならないし、建材の発注もしななければならないので、やはり担当の現場監督を外すことには問題があります。

さて、工事の経過の記録係も必要なので担当営業マンにお願いして、3人でスタートです。ご夫婦が仮住まいのアパートに引越しを完了して、すぐ工程に打ち合わせ会です。
で・・「どうすれば、いいんだ!」と聞いてやるからよ」言わんばかりに・・睨みつけられての会議です。

■原因の特定

この現場での床下の温度は20℃相対湿度90%の露点温度は18℃でした。この時期の岩手の外気温は室内の気温は20~22℃前後になっています。先に基礎断熱土間床工法の室内と床下の温湿度の関係で報告したように室内温度が20℃の場合には3℃前後低くなる傾向にあるので当然露点温度18℃になっていたと考えるのが妥当で床下の一番断熱が弱い箇所で表面結露が発生したと考えられます。

結露が発生するとその結露(水滴)の表面温度はさらに降下するので益々結露を助長させる要因となります。
※建物内で結露が発生すると、最初の発生点を中心に広がっていく。

その理由とは
①結露すると各材料が湿り、湿り気を帯びた材料は熱伝導率が上昇する。熱伝導率が大きくなると、熱の伝導が多くなり、室内側の温度が下がってしまう。そのため露点温度がより低くなって、ますます結露の発生が増大する経過をたどる。

②表面結露が発生すると、部屋の空気は結露が発生した所に接しているものだけが含んでいた水蒸気を一部が水に変えてしまったことになり、水蒸気圧が減少する。そのために、その部位と他の一般空気との間に水蒸気の流れが生じ、結露を生じた面には水蒸気の補給が続くことになる。ちなみに内部結露も同様で、一度内部結露が生じると、結露の発生層の水蒸気圧はその温度における飽和水蒸気圧で止められてしまい、それ以上の水蒸気は水になるから、水蒸気の流れは室内外の水蒸気圧分布と異なり、結露発生層の飽和水蒸気圧との差で流入してくるので、透過水蒸気量が増大する。従って一度結露が発生すると、自然に増大してしまう。

※熱と水蒸気は同じ方向に流れる性質がある。
今回小屋裏でも結露が発生した理由は床下の温度上昇ともに水蒸気も一緒、壁の隙間を通って上昇し始める。
小屋裏は床下より温度が高いため、床下より水蒸気を多く含むことができる環境にあるが、床下より高い温度でもちょとした温度降下ですぐ露点温度に達してしまうので結露を増大させてしまう結果となっている。

■改善計画
1・基礎の給気口、排気口(パイプファン)は全部撤去する。(貫通穴は塞ぐ)
2・1Fの床、根太、大引は解体する。(後日新設とする)
3・リビングのFFヒーターはそのままとする。(その他の設備機器も同様とするが便器は取り外し)
4・壁は外部、間仕切間はそのまま、巾木は撤去する。(後日新設とする)
5・2Fの天井、クロスは全部解体する。(後日新設とする)
6・開放された小屋裏の妻側にエアコン2台を設置する(仮設置)1Fには1台設置されている。
7・市販されている除湿器できるだけ用意する。

■改善方法(作業)
10日間は窓を閉めて、除湿器とエアコンの除湿で室内の湿気を吐き出す。
その後状況をみて1FのFFヒーターでベイクアウトをする。
(ベイクアウトは本来シックハウス」対策として用いられる。)
噴出し口は土間に向けて25℃前後の温度を5日ほどかけて少しずつ水蒸気を排出させる。
さらに様子をみて30℃前後に温度を上げて5日ほど、さらに水蒸気を排出させる。
急激に温度を上げてしまうと木材が歪曲したり割れたりするので注意が必要。
この時エアコン、除湿器で水分を外部に排出させる。
ポータブルの除湿器は数時間で水が満杯になるので時間を決めて交換しなければならない。

※現場監督の意見でこんなことをしないでも換気量が少ないのだから、基礎の給気口は開けて、排気口(パッコン)は閉じて、2Fの窓から送風機で排出したら早く乾燥するのではないか?の意見が出たが・・・何故2ヶ月の期間を予定したかというと、梅雨時にはできるだけ外気空気を室内に入れたくないため、現場監督の方法は梅雨が終わって、外気空気の湿度が低い時には有効である。この時期にはますます結露を助長させることになる。

■解決の確認
2週間程度のベイクアウトを含め強制除湿で50%の相対湿度を確認したところで、今度は暖房及びエアコンを止めて既存の換気システムを作動させる。その後この状態で1週間ほど様子をみて、露点温度が16℃前後になることを確認して床、天井を仕上げて完了。

●あれから1年経過していますが、その問題とされた家は、
本来の高気密高断熱住宅の四季を通じて快適な住環境になっています。
今回の大きな原因は基礎施工の養生期間の少なさでした。


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Author:昆寛(コン ヒロシ)
住まい環境プランニング(同)
(高性能住宅設計:技術顧問)

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