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住まい環境プラニングは国内唯一の高気密性能を担保できる気密施工マイスターを育成する設計事務所です。 高性能住宅の熱環境分野に携わって28年、理論と実体験に基づいて省エネ住宅の開発研究、普及に努めております。住宅に大切な結露対策は得意分野、結露のトラブルも解決いたします。

同じ次世代省エネ住宅なのに家(うち)は何故寒い?(完)

前投稿の(2)では問題となるリビングの体感温度を上げることはできるのでしょうか?
の問いかけをいたしました。


実はAさん、Bさん宅の暖房システムは蓄熱暖房機が設置されています。そのため、当然のことですが体感温度を上げるためには蓄熱暖房機の放熱量を多めにすればいいことになります。しかし、蓄熱暖房機の場合はある事情により簡単に放熱量を多くする。といったことができない暖房システムなのです。

蓄熱暖房機は深夜電力でレンガを≒700℃に暖めて蓄熱し、日中、その輻射熱で暖房するシステムです。レンガを暖めるだけですからFFヒーターのような噴出しに威力はありません。ゆっくり、じわじわと暖める感じです。電気料金は深夜電力を使って蓄熱する契約の他に不足な場合に補う追い炊き契約がありますが、深夜と日中とでは日中の方が高くなる価格設定のため、日中の追い炊き契約されていないのが一般的です。(これがある事情なのです。⇒料金は、昼が30%高く、夜間は70%割引、昼と夜の使用時間の比率によっては、全体の電気料が安くなるのですが使い方によっては?です。)

そのため、当然、Aさん、Bさんも同様に追い炊きの契約はされていないのです。

467zgmwmta2mdx06g.jpg
●写真の熱画像は一般的な蓄熱暖房機の設置の仕方、緑色の部分は窓で冷気にさらされて表面温度が低いことを示しています。この状態では体感温度は低く不快になることを熱カメラで見ることができます。

体感温度を上げるためには放熱量を増やしたいのに蓄熱不足になればいくら、高性能な住宅であっても自然な状態で室温を上げることはパッシブハウス、クラスにならないと不可能です。

Aさんの体感温度は自分の家は寒く、Bさん宅の方が暖かいということでした。体感温度が大きく左右される間取りに窓の大きさ、数等がBさん宅よりも大きいことが原因の一つにあるにしても蓄熱暖房機の放熱が十分であれば寒さを感じない筈です。
そうであれば、蓄熱暖房機の設置数(暖房能力)にも問題があるのでしょうか?

そこで、もっとも寒いと言われる時間帯の夕方にお邪魔してみました。
すると・・なんと、Aさんが言うように寒いのです。
蓄熱暖房機から暖かさはなく蓄冷冷房機のように冷たいではありませんか。本体の下からファンで吹き出される風は冷風なのです。これでは寒く感じるのは当たり前です。

Aさんから蓄熱暖房機の使い方をお聞きすると「蓄熱量を目いっぱいにして放熱も目いっぱいにしてファンを回す。」の使い方をしているようでした。その結果は・・・・夕方からは寒い!!

そこで、Aさんに「ファンを連続して強で回してしまうと、蓄熱量が減るのが早まるので、蓄熱量を弱でファンを回して様子をみましょう。」とアドバイスをして1週間様子を見ることにしました。

ところが、Aさんは(私のアドバイスを無視して)工務店の担当者に「暖房の能力の不足ではないか?」という再クレームを出したため、工務店では(早く解決したいため)Aさんの希望通り、蓄熱暖房機1台をサービスでリビングに設置したのです。
しかし、1週間後に、Aさんはさらに再々クレームを出したのです。

なんと…今度は「蓄熱暖房機は暑すぎる!」・・・です。

続きます!

前項ではAさんは建物に対する暖房能力不足を指摘し、サービスでリビングに設置されている同等の能力の蓄熱暖房機をサービスとして設置させました。工務店の担当者は2日後にAさんから「今度は暖かい!」の感謝の声を聞き、心の中では暖房能力不足だったのか!・・・と思ったそうです。

しかし、お客様の感謝の声に安堵した束の間に、今度は「[暑すぎる!!」と言うクレームが出てしまったのでどうしたらいいのかわかりません。このAさんのクレーム?が出た時点で蓄熱暖房機を設置する暖房負荷計算書と蓄熱暖房機の計画図面を見せてもらいましたが、多くもなく少なくもないぎりぎりの能力で蓄熱暖房機を設置されていたことを確認しています。

その後、Aさんは窓の開け閉めで暑さ、寒さを調整したようです。

ところで、実は私も岩手で初めて蓄熱暖房機を採用して似たようなクレームの経験しています。断熱性能は新省エネ基準のⅡ地域仕様の2.3kcal/m2・h・℃の外断熱+基礎断熱土間床工法の気密性能は0.2cm2/m2でした。50坪くらいの建物だったのですが10月に完成、引き渡しした12月の暮れに奥様から会社に「オール電化住宅なのに寒い!」というクレームをいただいたのです。

当時はオール電化住宅の(蓄熱暖房機の)走りでしたので、どうして寒いのか?その理由がわからず対応に苦慮したものです。幸いにも施主様は電力会社関係の方で暖房計画から設置まで電力会社が行ったため大事(もめごと)にならなかったのです。

さて、その対応に電力会社はどうしたかと言うと、床下に能力的には小さい蓄熱暖房機1台を設置したのです。すると、施主の奥様からは「暖かくなりました!」と奥様から喜びの電話をいただいたのです。

この時の状況がAさんと酷似しています。

その年の冬は、その状態(蓄熱暖房機を1台追加した状態)で終わりましたが翌年冬の12月頃には今度は「暑すぎる!」というクレームをいただくことになってしまったのです。これもAさんと同じです。

基礎断熱・高断熱・高気密住宅で蓄熱暖房器を採用する場合には初年度はこのような現象が出ることをお客様に十分説明をする必要があります。追い炊き式であれば電気料は余計にかかるものの初年度の寒い!といったクレームはありませんが一般的には追い炊きは契約しませんので初年度の注意事項として十分説明することが必要です。

体験上の結論は蓄熱暖房機を採用する場合には建物の断熱・気密性能が抜群に良くても、蓄熱暖房機の選定、配分、設場所の仕方には十分注意しないとこのようなトラブルに見舞われることになります。様々な暖房器を使ってきましたが、安定してクレームが少ないのは、やはり、温度をコントロールできる温水セントラルヒーティングに勝るものはないと感じています。基本は各部屋の窓下中心に小さいヒーターをできるだけ多くすることで均一な温度環境を作ることができるからです。
469zgmwmji1mtl08w.jpg左の熱画像カメラはテラス戸の床下のパネルヒーターの力で体感温度を上げていることが見られる画像:中央には人が立ち膝の状態。蓄熱暖房機のように蓄熱したものを使い切ってしまって寒さに耐えるより、温水セントラルヒーティングで自由に個別に温度上げ下げできるのがメリット!
最近の最先端の暖房システムは蓄熱暖房機ではなくヒートポンプでお湯をつくり、その暖かいお湯で温水セントラルヒーティングに利用する方法が脚光を浴びています。建物の断熱・気密性能が良くなればなるほど、この方法は低温輻射の温水セントラルヒーティングで最高の住環境が得られるものだと体験上感じています。

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住まい環境プランニング(同)
(高性能住宅設計:技術顧問)

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