賃貸マンションのオール電化リフォーム
この記事は2007年11月に6回に分けて投稿したものを引っ越しに伴って、修正、訂正、編集して読みやすいように一つにまとめております。

今回この建物をオール電化(IHクッキングヒーター、蓄熱暖房器他)仕様にリフォームする改修案の依頼があり3時間かけて現地に向かいました。
しかし、オール電化マンションにするためには図面を基にして断熱、気密、換気、暖房の現状をチェックする必要があります。
図面は事前にお借りして、頭の中に構造等をインプットします。
特に蓄熱暖房機を有効に使うためには高断熱、高気密でなければなりません。
一般的にはRC造りは気密が高いことで知られていますから気密については問題ないかもしれません。
そうすると
壁と開口部の断熱の状態のチエックと換気システムのチェックで済みそうですが・・・はたしてどうでしょうか!?
目視による、ある1室の状態は下の写真↓

1・間仕切り間にある和室の押し入れの上下の隅部に結露が発生した痕
2・ベランダの二重サッシの内側周囲の額縁に結露水の痕
3・外壁側の押し入れの壁には全面カビの痕
4・玄関廊下側の隣との壁の隅部に結露発生の痕
この状態を確認してから先ず、換気の風量チエックを行います。
このマンションの場合の吸気(排気)口はユニットバスの上、洗面脱衣室、トイレの上にあります。
給気口はベランダ側の設置場所に問題がありますが一応取り付けられています。

換気風量は1時間に○○m3吸気(排気)されているか換気風量測定器で測ります。
多くのマンションの場合の排気される風量は換気回数にすれば0.2回/h程度が多く・・・そのため結露を発生させる要因になっています。
このマンションも同じような気がしますがどうでしょうか?
写真のように
ユニットバス、洗面脱衣室、トイレを測り、その合計風量をその戸ごとの容積から換気回数を計算します。
RCマンションのオール電化リフォームのための調査報告(2)です。

右写真はその給気口の給気量を測定している風景です。
一般的には換気の風量測定は吸気(排気する側)口を測って、必要とされる換気量があるかどうかで判断します。
これでは、肝心の給気口から新鮮な空気が計画通りに入っているかはわかりません。
そこで写真のように給気側も測定して検討するのです。
今、調査している部屋はCタイプ部屋(2LDK)の給気口は2か所で吸気口は3か所になっています。
そこで、この部屋の換気回数を計算するために容積を計算します。
床面積62.1m2×高さ2.6m=161.46m3ですので
換気回数が1時間に0.5回の換気回数だとすると
161.46m3÷2=80.73m3/hが必要であることがわかります。
そこで吸気口(排気側)を風量を測定してみると結果は
ユニットバス(43m3)、洗面脱衣室(29m3)、トイレ(22m3)で
その合計は43+29+22=94m3になって、必要とされる80.73m3を上回っていますから換気回数は合格(OK)になりますが・・・・。
これだけではこの部屋が計画的に(必要とする所から空気を取り入れ、必要とする所から排気する。)1時間に0.5回の空気が入れ替わっているかは、この結果だけではわかりません。
その答え(1時間に0.5回の空気の入れ替え)になっているかは実は、前段の写真のように給気口を測ってみないとわからないのです。
そこで
給気口2か所を測ってみます。・・・・・・何と!!?
2か所15m3=30m3しか給気されていないのです。
吸気側が94m3でしたから差額の64m3の空気が給気口2か所以外の何処かにある隙間から給気されていることになります。

しかしそのストロー本体の何処かに穴があったとしたら、その穴からは空気が入ってしまい、肝心のジュースは100%は入らないことになります。このマンションはこんな状態になっていることが想像されます。)
そんな理由で
RCマンションは気密性が高いのが常識ですが・・・実は・・・・低気密なのです。
そのため、計画通りの換気がされないため、
空気が淀み場所ができて、
結露からカビへと変わりながら不健康な環境になっています。
それでは、その給気口以外の隙間は何所にあるのでしょうか?
また、
オール電化にリフォームするのに、この事が問題になるのでしょうか?
RCマンションのオール電化リフォームのための調査報告(3)です。
計画換気の排気量は風量測定器で測った結果
2LDKの部屋は1時間に0.5回/hあることがわかり、
換気回数は合格(普通は合格!)・・・かのように思えました。
・・・が
合格かどうかの再確認は
給気口(外気の給気量)も関係するので測ってみる必要があります。
その結果
多くの隙間が何処かに存在していることが想像されることをお話しました。
そこで、何処に隙間があるかを目視で探してみます。

何処にでも取り付けられている一般的な排気型一方通行のレンジフードですが、このレンジフードは使用されていない時はダンパーがないため、汚れた空気を捨てるためにあるのに、逆に給気口となっています。
それも大きさは150φありますのでとても大きな隙間と言えます。
オール電化で蓄熱暖房器仕様にする場合は、低気密ではせっかく温めた熱を隙間からドンドン捨てるだけですので、このレンジフードはダンパー付の同時給排のレンジフードに交換しなければなりません。

開口部(サッシ)の枠周囲が結露水で木額縁が汚れが滲み込んでいます。
サッシは後付けタイプの二重サッシになっています。
外部側はアルミの単板ガラス+内側はプラスチックサッシの単板ガラスで主に引き違い窓ですので気密性は良くはありません。(レールの隙間がありすぎるのです)→ただ最近のPVCサッシは引き違い窓であっても気密性がとても高いメーカーがあります。
また、内側サッシの四方枠の隙間もシーリングされていないため、アルミサッシのレールからの外気がその四方枠の隙間から外気が侵入しています。
さて、隙間探しはこれで終わりでしょうか?
レンジフード、サッシの隙間を簡易にテープで仮止めをして再度給気口からの給気量を測定してみます。
すると、以前よりは少しは多く給気されていることがわかるのですがまだ、どこかに大きな隙間があることを教えてくれています。
さて、何処なんでしょう?

その他に存在する隙間は何処だ!?????・・・・・
前頁に続いてRCマンションのオール電化リフォームのための調査報告(4)です。
前頁はRCマンションの低気密の原因を探るために、目視であちこちと想像される場所の隙間探しをしました。(引き違い窓のレールからの漏気、レンジフードに大きな漏気がある等・・。)
給気と吸気の関係から考えると、どうしてもこれ以外に大きな隙間がないと理屈にあいません。限られた広さの2LDK内部からは、これ以上の原因究明は無理なようです。
コンクリート壁に穴が空いていて、内部から石膏ボードで見えないのか?
しかし、そんなことは通常は考えられません。(不思議です?)
そこで、再度、廊下に出てその他の場所を探すことにしました。

この扉はパイプシャフトで1階~5階までの給排水管が通り、ガス湯沸かし器も設置されている所です。が・・・何故?断熱材を入れているのか不思議です。
ガス湯沸かし器の下の鉄扉の内側にも断熱材が張り付けています。
ということは、このパイプシャフトは外部ではなく室内として考え設計されたようです。
しかし×の断熱材は何をするために後で張り付けたのか?です。
それを知るために、×の断熱材をはがしてみることにしました。
すると・・・・・何とそこは・・・・。

そうです!
このガラリから冬には冷たい外気が入り込むため、断熱材で吹き込みを防止するため入れていたのです。

写真はパイプシャフトを下から(ガス湯沸かし器は下部にあるので写ってはいない。)撮影したものです。
室内空間と考えているためにブロック積みされている×の部分に断熱材がありません。
鉄扉側の外壁側には断熱材はスタイロフォームであらかじめ打ち込みされています。
やっぱり、
パイプシャフト扉の上下に給排気ガラリがある訳ですから、換気システムで外気が強制的にここから入ることになります。
(これでは、当然・・低気密のRCマンションです。)
さらに
パイプシャフト内部は無断熱ブロックですからから、
この場所が断熱不足により結露発生の原因にもなっていることが判明しました。
そこで、内部結露確認のためにユニットバスの天井点検口から室内側がどうなっているのか点検することにしました。
(RC賃貸マンションのオール電化のリフォームです。(5)
内部結露発生の確認のためにユニットバスの天井点検口から室内側の断熱状態がどうなっているのか点検しています。

右壁が通路側の外壁部分で上はユニットバスの天井です。
青い色の部分はスタイロフォーム(断熱材)
この×の境壁部分には何故か断熱材が打ち込まれておりません。
この部分は非常に大事なところで最低でも600mmは断熱材が必要です。
それがないのですから当然、隅部に結露が発生する筈です。換気の風量にも問題がありますが、断熱欠損で換気だけで結露は防ぐことは無理です。
よく見ると断熱材と断熱材との接合部も連続しないでコンクリートが剥き出しになっています。条件によってはこの部分も結露が発生することが推測されます。

上の写真のように境壁に断熱材がないため、右の写真のように隅部に結露が発生していることが確認できます。
最近のRCの内断熱の場合は現場で内側から現場発泡ウレタン吹き付けをしてしまうので、断熱材が薄いことがあるにしても断熱欠損ということは少なくなっているようです。

前頁で説明したようにブロックで積み上げられていて無断熱であることが確認できます。
これでは、オール電化マンションに改修するためには各戸の壁4面と境壁と天井、床面を断熱材(現場発泡ウレタン)で吹き付けする必要があるようです。
その断熱材の厚さはⅡ地域仕様程度にして暖冷房負荷計算をして暖冷房の能力を決定します。
●住宅の場合でも暖冷房の計画には暖冷房負荷計算をして設置することが大事です。
RC賃貸マンションのオール電化リフォームの(6)・・・改修計画案がようやくまとまり提出です。

しかし、一昔前のRCマンションはこの4つのバランスが取られていないため湿度が高く結露、カビの発生の環境になってしまっています。特に換気がアンバランスで結露が出るのは当然の室内環境になっています。
換気の能力が十分あっても今回のように低気密のRCマンションでは換気計画をしようにもも計画が成り立ちません。
また反対に高気密であっても、換気の能力が不足している換気扇がついていて結露、カビの室内環境になっている実例が多くあります。一戸建の住宅であっても集合住宅であっても、オール電化にするための考え方の基本は同じです。
その基本とは断熱・気密・換気・暖房のバランスが適正になっているかのチェックなのです。
断熱の状態はどうか?
断熱欠損はないか?
断熱の種類、厚さは妥当か?
場合によっては一部北側のコーナーなどの断熱が不足がちな所は仕上げ材を一部解体して断熱施工状況を確認します。
場合によっては熱カメラで断熱状況を確認することが必要です。
次には気密性と隙間の確認です。

しかし、今回の物件は換気の風量を測定することで、気密性が高いか低いか(隙間の大きさはわかりません)の原因を探る方法を取りました。
本来、RC造りは気密が高い構造なのですから、気密が低い原因は開口部付近とか後工事で改修した部分を探しチェックすることで原因を特定することができます。

さらにブロックのジョイントはモルタルを詰めただけですから気密も確保ができません。
さらに室内側の考えられたメーターBOXの扉は低断熱低気密扉なため・・・この部分が給気口となって、冬には冷気がバンバン入る非暖房室に作られてしまっていました。
その他、改善しなければならない所を箇条書きすると
①レンジフードが非密閉型のシロッコファンであること。
(未使用の時はこの部分が給気口になっていて、冬にはこの付近の温度は低いことが想像されます。)
②サッシは二重サッシ(後付けでPVCサッシの単板ガラス)となっているが、木額縁の周囲に結露、カビの発生痕が見られます。
③玄関ドアの扉と枠にも結露が見られます。
④押入れの天井、壁には結露とカビの痕が見られます。
⑤北側の部屋の隅部にも結露とカビの痕が見られます。
それでは、どのようにしたら快適な室内空間に変身させることができるでしょうか?
オール電化マンションにするための改善方法は次回に続きます!
いつもご購読、応援ありがとうございます。
ブログランキングに参加中しています。
↓ ↓
にほんブログ村 住まいブログ 人気ブログランキングへ
- 関連記事
-
- 築30年の断熱リフォーム計画 (2011/07/21)
- 断熱リフォームでクレームにならないために (2011/07/08)
- 外断熱のビフォーアフター(調査) (2011/06/08)
- 賃貸マンションのオール電化リフォーム (2011/06/03)
- 悪徳!外壁リフォーム事件 (2011/04/24)
- 断熱ビフォーアフター (2006/08/05)