
これはダイライト合板を下地として硬質ウレタンを現場発泡で施工した現場の状況です。
ウレタン現場発泡での施工は価格も安く、断熱性にも富んで、気密性が良いということで人気の施工方法になっています。
ウレタン現場発泡には硬質ウレタンフォームと軟質ウレタンフォームの2種類あります。
硬質ウレタンフォームは独立した微細な気泡の中に熱伝導率が極めて小さいガスを閉じ込めているため、プラスチックフォームの中では最も優れた断熱性能があり、主にRCとかSC構造の建物の内側から使用されています。
一方軟質ウレタンフォームはポリオールとポリイソシアネートとを主成分として、発泡剤、整泡剤、触媒、着色剤などを混合し樹脂化させながら発泡させたもので、気泡が連通し柔らかくて復元性のあるのが特徴で、50倍、80倍、100倍発泡ウレタンという名で主に住宅用に使われています。
(注)軟質ウレタンフォーム⇒正式呼称は低発泡硬質ウレタンフォーム(建築物断熱用吹き付け硬質ウレタンフォームA種3 )どちらも気密性が高いというこが魅力で採用されるケースが多いようですが果たして、本当に気密性が高いのでしょうか?

そこで、気密測定をすることにしました。隙間の大きさを調べることで性能の良し悪しが明確にわかります。
この測定した現場の工務店はウレタン現場発泡での施工実績は13棟。
しかし気密測定は初めてだということでした。
14棟目に何故?
気密測定するのか?・・・なのですが施主様のご依頼での測定だったからなのです。
(工務店の営業マンは単位隙間相当面積01.0cm2/m2は確約したとかで・・大丈夫ですとのこと。)
目標1.0cm2/m2なのですがどうなんでしょうか?
下のデーターは気密測定の結果の一部抜粋です。
工務店の目標値は1.0cm2/m2でしたが測定の結果は以下のように営業トークである1.0cm2/m2どころか3倍強の3.94cm2/m2で悲惨なものでした。5cm2/m2ランクが気密住宅というのであれば、満足する気密性能かもしれません。しかし北国仕様では施主様は満足はしません。何故なら、次世代省エネ基準の2.0cm2/m2を最低として望むからです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
各気圧差における通気量は下記の通りである。
Q 19 pa 520.00m3/h
Q 29 pa 660.00m3/h
Q 39 pa 800.00m3/h
Q 49 pa 900.00m3/h
測定結果各気圧差における通気量は下記の通り
通気率a = 333.49 m3/h
N 値 = 1.63
漏気回数ACH=5.96回/h・50pa
総隙間相当面積aA=230.11cm2
単位相当面積C=3.94cm2/m2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
工務店の営業マンも大工さんも性能が出ないことに不満顔です。「断熱屋はウレタンを吹き付けただけで気密は出る・・・と言ったのにと責任は断熱屋にあると言わんばかりです。
果たして、気密が出ない原因は断熱屋さんのせいなのでしょうか?(ウレタンを吹き付けした断熱屋さんがかわいそうです。)
そこで原因の究明を全員で探ることにしました。
この住宅の総隙間相当面積が230.11cm2ですから15.17cm×15.17cm角の大きさの隙間があるということを教えてくれていますが、隙間は何処にあるかはわかりません。

そこで左写真のスモークパッファーを使って隙間を探します。
スモークパッファーの用途は建物の漏気箇所の確認 、ダクトの漏気箇所の確認 、室内の気流の確認 燃焼器具の排気ガスの逆流や漏れの確認 等に使います。赤い筒の部分を折り曲げると中で液体が化学反応を起こして、白い煙を発生させます。その白い煙の流れで漏気を探すものです。煙であれば何でもいいように感じられますが一般的な煙、例えば煙草の煙、線香の煙は使えそうですが煙状態がすぐ消えてしまい使えません。このスモークパッファーの煙は白い煙を長く持続していてくれますので漏気の隙間探しにはピッタリの商品です。
それを主に開口部廻り、土台廻り、屋根と壁との取り合い部分、下地のダイライトのジョイント部分にスモークパッファーを当ててチェックします。
すると・・・・・。
気密測定をした結果1.0cm2/m2の高気密を証明するどころか、単位相当面積C=3.94cm2/m2の低気密であることを実証する結果になってしまいました。
大工さん・営業マン、断熱屋さん
「そんな訳ねがべ(ないだろう)?」と言うような顔をしています。

左の写真の施工状況を見ると施工後の仕上がりがよく気密欠損(隙間が)があるように見えません。
しかし50Pa(50パスカル)の圧力で減圧すると→印部分からスースーと外気が流入していることがスモークバッファーの煙の流れでわかります。
※ 50パスカルの減圧の状態というのは測定した住宅を車に例えた場合におよそ35km~40kmぐらいで走った時に住宅にかかる風圧の状況…その時にその風圧で隙間から侵入する空気を調べる。高気密であれば小さい圧力で漏気がわかるが低気密になると高い圧力をかけないと見つけることが難しい。
しかし、どうして→から漏気するのか?
それを検証する前に大工さんに次のような質問をしてみました。
「ダンライト合板を張る前に気密パッキンか気密テープを使いましたか?」
「何だ!気密パッキンって?」
「そっただもの、使ったごとがねぇ~」
「断熱屋が合板を普通に張るだけで気密が取れるがら・・と言ったべ!」と
現場の中では職人さんたちが喧々囂々(けんけんごうごう)です。
漏気する部分は全て、ダイライト合板のジョイント部分です。
ウレタンの収縮とか木の収縮による隙間、また吹き付けのミスなどが原因です。
下地で気密処理をしない場合は高い気密を望むのは無理と言えます。
現場発泡ウレタン材は繊維系断熱材と比較すると素材そのままでも比較的に気密は取りやすい断熱材と言えるだけで、十分気密を意識した施工の場合は下地材の合板で気密処理をするべきです。
つまり、外断熱の場合はプラスチック系断熱材を張る前に気密処理を施しますが、それと同様にダイライト合板で気密処理をしてウレタン吹き付けすることがポイントなのです。
それでは、どうするのか?
1.0cm2/m2以下の気密住宅の筈が3倍も悪いデーターなのですから、工務店の社長も腑に落ちない様子です。
そこで、出ない理由を・・・・・・・・・・と説明
社長は「よぐ、わがらねがら・・社員全員集めるがら講習会をしてけろじゃ!」
ということになり、数日後「気密の取り方」の施工講習会です。

写真は現場での施工講習会の風景です。
大工さん、営業、社長全員が集合して、私のチェックの施工状態の合否の結果を待っている風景です。前回の住宅は気密補助部材を使わないでダイライト合板を張った上にウレタン吹き付けでしたが、この現場では2種類の気密部材を使って施工指導しています。
さてその部材とは、気密パッキン材(ノルシール)と気密防水テープ(カットクロス)のこの2種類だけです。気密パッキン材ノルシールはサンゴバン株式会社製造品、この気密パッキンはポリ塩化ビニールを基材とした独立気泡構造のシーリング材で低圧縮で高い気密効果を発揮する主に建築以外に利用されている商品です。

写真の気密パッキンはカタログにはありませんがV-754という製品です。
厚さ、硬さ、密度などの違いが品番になっていますが、すべての品番商品を試験的にパッキン材として使ってみて、価格的、接着力、硬さから判断してV-754を使っています。
(非常に接着力が強く、貼り付ける木部が少々濡れていても接着するのがすごい!)
お問い合わせは
三井化学産資(株)建材資材事業部:TEL03-3837-5825 FAX03-3837-1945

これは気密と防水効果兼用しているテープ様々のメーカーのものを使ってみましたが価格と接着力の強さと手切れのよさでお薦めです。縦方向横方向に手で切ることができるので施工性がいい。
色もブラック、ホワイト(半透明)がありますが私はホワイト(半透明)を使っています。これだと半透明なので断熱欠損としての隙間が大きさもよく見えるので、補修もしやすいし、補修したかどうかが目視で判断できることです。
(ブラックだと隙間があっても目視で探すことができない。)
お問い合わせは
三井化学産資(株)建材資材事業部:TEL03-3837-5825 FAX03-3837-1945
この二つの気密部材のノルシールはダイライト合板のジョイント部分に気密パッキンとしてこのノルシールを先貼りします。その上にダイライト合板を張り付けて、さらに防水テープとしてカットクロスを貼ります。

その施工後の写真が左写真です。
勿論、開口部のサッシを取り付ける際にもノルシールを貼ってから、サッシを取り付け、さらのカッとクロスで防水止めテープとしてカットクロスを貼ります。
これが完了したら、内側からウレタンを現場発泡で施工完了です。
この状態で仮の気密測定をして見ますと・・・・何と!!?
(大工さんたちの驚きの顔、顔です。)

そこで気密施工の講習会を経て新築15棟目はマニュアルの気密部材を使っての施工に挑戦です。大工さんは「手間がかがるなぁ~。」「どこでも、こんなごとやってるのが?」とブツブツ言いながら働いています。
大工さんがブツブツ言いながら働くのはわかる気がします。
何故なら、気密パッキンとか気密テープを使う理由は気密を取るためであることは知っていますが何故!?気密を取らなければならないのか?気密を取ることでどうなるのか?をよく理解していないからなのです。
そこで以下の内容を気密測定の前に説明です。
■何故気密化が必要なのか・・・といえば
↓
1・隙間をなくする。
気密化とは簡単にいうと隙間をなくするということです。
気密化は住宅の断熱材と密接な関係にあり、どれだけ多くの断熱材を入れても、気密が高くなければその効果は半減してしまいます。
2・壁体内気流は大敵である。
気密化は「壁体内気流」の防止という意味で非常に重要です。
壁体内気流とは壁の中の空気の流れ(木造住宅では床下、壁の内部、小屋裏が空間的に繋がっています。
小屋裏と床下には換気口を通じて空気が自由に出入りするので、壁体内にも簡単に外気が入ってきます。
これが壁体内気流です。
断熱材は単独では特に繊維系断熱材の場合は、気流を通してしまいますので、外の冷たい、暖かい空気が壁体内に流れ込み断熱効果が発揮されなくなります。
また直接的には隙間風を防ぐ効果があり熱の損失も防ぐ効果があります。
ただし気密性を上げることにより隙間がなくなるため自然の換気(漏気)がなくなるため計画的な換気が必要となります。
●最近の住宅は計画換気の義務化によりほぼ100%換気システムが設置されるようになりましたが肝心の気密性能がいくらあるかを測定している施工会社は数少ない状況です。
若し読者の方で新築を考えている方があれば気密測定を条件とするべきです。私の考えではできれば全国一律1.0cm2/m2以下が必要と考えています。(できれば0.5cm2/m2以下を推奨)
さて肝心のこの現場の気密測定の結果を見て「ほんとがや?」と大工さんたちの頭の中は疑問符???のようです。
以下は気密試験報告書の抜粋です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Q 49 pa 100.00m3/h
Q 58 pa 120.00m3/h
Q 68 pa 140.00m3/h
Q 78 pa 160.00m3/h
測定結果
各気圧差における通気量は下記の通りである
通気率a=19.98 m3/h.9.8Pa
N 値=1.0
漏気回数ACH=0.38回/h・50pa
総隙間相当面積aA = 13.79cm2
単位相当面積 C = 0.13cm2/m2
評 価
内外気圧差50paにおける漏気回数0.38回とスウェーデン建築基準(3.0回/50pa)カナダR-2000住宅基準(1.5回/50pa)の目標を大きく上回る気密性能を有する住宅である事が証明される。
単位隙間相当面積が0.13cm2/m2と国土交通省の定めた次世代省エネ基準の義務化2cm2/m2を大きく上回る超高気密住宅であり、自然下での殆どの外風圧に左右されない住宅である事が判断される。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ご覧のように隙間相当面積0.13cm2/m2という素晴らしい気密性能でした。在来軸組工法+気密部材+ダイライト合板+大工さんの丁寧な施工の複合効果の結果です。
現場発泡ウレタン工法は高気密か?のタイトルでしたが吹きつけの場合の気密性は断熱材そのものよりも下地材に気密性があるかによって決まります。現場発泡ウレタンフォームは現場で作るため、温度、湿度とか吹き付け職人の腕でウレタン形成の良し悪しが大きく左右されます。
素材だけの性質を比較をすると現場発泡ウレタンは繊維系断熱材より気密性能があるということになるのですが、下地に気密処理を意識すると吹き付けウレタン工法は高気密工法になり、ウレタン吹き付けだけで気密を取ろうとするとは高気密にすることは難しい工法だと言えます。
いづれ、どの工法であっても気密と断熱は別と考えて丁寧な施工しないと高い気密が出ないことを教えてくれ一例でした。
↓ ↓
にほんブログ村 住まいブログ 人気ブログランキングへ
theme : 建築
genre : 学問・文化・芸術