築30年の断熱リフォーム計画
この記事は2008年10月に5回に分けて投稿したものを引っ越しに伴って、修正、訂正、編集して読みやすいように一つにまとめております。
今日はA県Y市のS設計事務所さんからのご依頼で断熱リフォームの断熱設計のための現地調査に行ってきました。
断熱リフォームといっても窓を断熱サッシに取り換えるとか床暖房をするといった対処療法的なリフォームではなく、断熱・気密層を全面リフォームをすることで高性能住宅を造ろうという提案です。
勿論、部分的に断熱リフォームするよりはコストはUPしますが、できるだけローコストに抑えての高い断熱・気密性能を確保した質の高い熱環境を提案するようにします。
(ローコストでありながらハイレベルな高性能住宅です。)
調査住宅は築30年経った一部二階建ての外壁モルタル、延べ床面積196.67m2の在来木造住宅です。
現況の断熱材は10k/m3の100mmのグラスウールが壁に充填、天井も同じグラスウール100mmが敷設されていて、床はポリスチレンフォーム25mmが根太間に挟み込まれています。
勿論、気密は一切考えられていない低気密住宅です。

これは30年前の設備ではなく数年前に改修工事で設置されたもののようです。
窓も一部・・居室、台所、洗面脱衣室、浴室は二重サッシにしてあるものの廊下とか納戸と玄関、勝手口などの普段住人がいない場所は既存のアルミサッシのままです。

典型的な「人がいる部分だけを断熱して暖房する個別暖房」の考え方のでリフォームです。
それでも、、リフォーム直後は従来の室内の温熱環境は部分的であっても暖かさを感じますが、居室から一歩出ると寒い環境の廊下などは依然と変わらない環境なのです。
むしろ、リフォームして暖房を焚くことで従来より各部屋の温度差が大きくなりすぎて「リフォームしたけれど何故か?前より寒い感じがする!」といった現象に悩まされることになります。
そんな寒さから解放されるためには家丸ごとを断熱・気密の大手術をする必要があります。。
そこで・・・その大手術するためのは各部位(天井、壁、床間取り、既存の設備機器の種類と能力、開口部、外回りも)の現状を調査が必要です。
調査することで最善のローコストでできる断熱リフォームの施工方法を考えることができます。
家を丸ごと断熱リフォームの場合の施工方法
①屋根は外断熱にして外壁は内断熱にする方法
②屋根、外壁を外断熱にする方法
③天井断熱にして外壁を内断熱にする方法
④天井断熱にして外壁を外断熱にする方法
さらに床は
⑤布基礎はそのままにして床断熱にする方法
⑥布基礎を基礎断熱に改修して床を断熱しない方法
(基礎断熱も内断熱と外断熱がある。)
⑦ベタ基礎はそのままにして床断熱にする方法
⑧ベタ基礎を基礎断熱に改修して床を断熱しない方法
大まかにわけると屋根、外壁は4工法と床は4工法があり、これらの各工法は施主様のリフォーム内容のご希望によって複合され断熱リフォームの施工方法決定されます。
例えば、室内のリフォームは一切ない場合は②の屋根、外壁を外断熱で施工する方法を選択することで居住者は生活しながら断熱リフォームすることができるのがメリットになります。
(但し、欠点は外部工事なので時期によっては雨、雪、台風などに左右されので工程を組む時には注意が必要です。)
一方、屋根、外壁は既存のままだったりリフォームしても塗装程度+室内のリフォームが大規模の場合は室内の天井、壁、床を解体する場合では③の天井、壁を内断熱にする。+⑤に床断熱する施工法を採用します。
またダクト式セントラル換気扇を設置する場合は一部天井を解体して換気扇を取り付ける必要があるため換気システムによって天井解体、新設する箇所が増えてコストが上がってにしまうので注意が必要です。
換気システムには熱交換タイプの第一種換気装置と自然給気排気型タイプの第三種換気装置がありますが、どの換気システムを設置するかによってリフォーム工事のコストが上がってしまいます。
(コスト的には第三種の換気システムの方が低コスト!)
さて、対象の物件がどの施工方法が低コストで性能(断熱、気密)を上げることができるか現地での居住者の聞き取りを行いさらに既存の住宅の断熱状態を目視調査をします。



上の写真は床下ですがポリスチレンフォーム25mmの板状断熱材が根太間に挟み込まれています。
断熱材が脱落しないように断熱材抑えがないためにあちこと写真のような状態が見られます。
これでは誰が見ても断熱材の効果は低いことが明白です。
(この床断熱の施工状態はこの調査物件特有のものではなく、低気密住宅の場合にはよく見られる光景なのです。

グラスウールが床下の土台(根太部分)に気流止めがないために床下(土)の湿気が床下の断熱材に侵入し内部結露でカビに侵されている状態を見ることができます。
さて、
断熱をする方法は内断熱か?それとも外断熱か?
あるいは複合工法か?
どちらにするかはS先生の室内のリフォーム内容によって決まりそうです。
築30年の断熱リフォーム(熱計算1)
室内の間取り等の改修図面が決定されるまでは
断熱材が外断熱の発砲系プラスチック板にするか?
内断熱の繊維系断熱材にするか?
が未決定であっても熱計算(Q値)の算出作業を早目に行います。

これを事前にしておくことは全体のリフォーム予算のバランスを検討する上でとても大事な作業となります。
特に今回は断熱リフォームですから予算が厳しくなり、全体的にコストを下げなければならない時には単純に断熱材の種類とか厚さを変更して金額を下げるのではなく、暖冷房のランニングコストの説明を行うことで費用に見合った効果があるかを納得していただいた上で進むことができます。
例えば計算をしてQ値1.6wだとすると・・・「お薦めのQ値は1.6wの住宅で暖房費は月に●●円冷房費は●●かかりますが断熱工事費は○○円です。Q値を1.9w程度にすると暖冷房費は月に○○円かかりますが断熱工事費は○○円で1.6wより断熱工事費は○○円下がります。」といったことでQ値=暖冷房費のランニングコストから断熱リフームにかかる全体の費用のバランスを考えながら打ち合わせができます。
上記のようにQ値の大小の違いで暖冷房費のランニングコストが変化することと施工費の関係を表にすると・・・「何年で元が取れます!」といったような費用対効果の説明がができるようになります。
しかし、この暖冷房のシミュレーションを担保できるのは高い断熱・気密の技術と経験で施工力がある施工業者になります。
勿論、それに関わる設計士、職人さんたちも同様です。
自信のあるリフォーム会社(施工業者)ではQ値の提示と暖冷房のランニングコストのシミュレーションも提示しますので断熱リフォームを依頼する場合の大きな目安となります。
(ただ暖かくなりますよ!といった営業トークを信用しないで実際はどうなのか見る眼を養いたいものです。)
ところでA県のリフォーム調査物件はどのくらいのQ値になるのでしょうか?
心配は90%の窓は引き違い(二枚引き違い、四枚引き違い)なので気密性能が1.0cm2/m2以下にできるかは疑問です。
そうであっても、許される断熱工事にかけることができる予算内で高性能なQ値の小さい住宅を目指します。
(できれば最低でも次世代省エネ基準程度にしたいものですが・・・?)
※参考
次世代省エネ基準の熱計算は
従来の熱計算と違って熱橋を含む熱貫流率の計算が必要です。
●お勧め熱計算ソフト
①SMASH→http://www.ibec.or.jp/program/files/smash.pdf
②省エネ判断→http://www.konasapporo.co.jp/Heating/EneCalc/EneCalc.htm
③QPEX→http://www.shinjukyo.gr.jp/qpex4.html
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