(この記事は2007年8月に投稿したものですが、無料相談にこれに類似したご相談がありましたので再投稿となっております。(改善に参考にしていただければと願っております。)
換気扇が壊れている!・・・カビが生えたのは換気扇が欠陥だからではないのか?と建て主はカンカンです。(当然です。)
そこで調査してほしいとA県の地元ゼネコンの建築部長から電話依頼ありました。
この現場は引渡しをしてから1年しか経過していないようなので
換気扇の機器そのものが故障であれば1年以内ですから十分無償で交換できます。チェックして新品の
換気扇を手配さえすれば1週間以内にでも解決しそうな調査ですから、私に出番はないように思えます。
「
換気扇をつけた業者さんにお願いしたら・・・解決ですよ!」
いや、
換気扇だけど、その換気扇の能力をチェックしてほしい・・」ということでM様邸にお邪魔いたしました。
設計は主に店舗とかビルを設計する超有名な設計事務所さん(東京)だそうです。住宅雑誌の載っていた「住宅○○賞」の受賞をみて、わざわざお願いしたのだそうです。
「これ!本当に設計事務所が設計、監理した住宅???」
(正直いって、フランチャイズの建売住宅にしか見えません。)
インターフォンを鳴らします。「ピンポ~ン ピンポ~ンピンポ~ン」
(いくら・・工事に係わっていなかったからといっても、クレームで行くのですから気分ががいものではありません。)
インターフォンを鳴らすと、「ようやく来たか!」という感じの怒り顔でご主人がお迎えです。(歓迎はしないが、欠陥と思われる箇所を直して貰うためには、しかたがない・・・・というそんな様相です。

名刺を交わして、訪問の主旨を説明。
そこで、部長とご主人が他の手直し工事の打ち合わせをしている間、私は調査をすることにしましました。
先ず、一番目に確認しなければならないのは、
第三種換気システムの吸気口部分(汚れた空気を吸って、排気する所)の排気量を風量測定器で吸気する量を測定してみなければなりません。測定は1時間に何m3排気されるかを瞬時にデジタルで読み取ることができます。
一般的に設置される台所、トイレ、クローゼット、浴室等の天井の白いグリルに写真のように当てて風量を測り、その合計が建物の容積の半分の排気量であるかどうか?を確認します。
↓こんな提出書類(一部分)になります。

ところが測定結果では十分な換気量(排気量があることがわかりました。カビが生えた(和室の畳)のは換気量不足の原因であるとは断定できません。
それでは、・・・何か?
思案中にご主人から声がかかりました。
「見る所が違うでね~の?」「換気扇はこっちだべ!」
といって指を指したのです。

何と!指をさした所は外壁面に取りつけられる給気口(外気を取り入れる所)です。
その換気扇のモーター音がしない。・・・・というのです。
「手を当てても風の出入りが全然ね~べ!」
(交換してけろ!)ということのようです。
ご主人は、この給気口はトイレ等につく換気扇(パイプファン)と同じく排気するものだと勘違いしているようです。
「あの~!これは換気扇ではないんですが・・・」
「ん・・・・!!」
そんな訳で、この給気口の説明をすることになりました。
(しかし、その給気口に手を当てても風の出入りがない・・って言てったな・・・それは、おかしい?)
説明する前に給気量も測ることにしました。
(この給気口は、およそ各部屋に1個以上外壁面に設置されています。開閉時時にパッコンと音がすることからパッコンとも呼ばれているものです。)

その測定結果は・・・・・・何と!
給気量・・・・・・はゼロ(0m3/h)なのです。
給気量はゼロ?(0m3/h)とはどういうことなのでしょう?
先の測定では、吸気量(汚れた空気を排出する風量)は建物の容積の1/2の入れ換えがあることが風量測定の結果でした。
ところで、この住宅の暖房はセントラルヒーティングとFFヒーターの併用になっています。
お邪魔した時は室内は暖かく、あまり気にしなかったのですがパネルヒーターに触ってみると異常に熱く感じられたので建物の
断熱・
気密性能には疑問に思ってしまいます。(火傷する少し手前の温度:触って「あっつい!」といって手を引っ込める・・・そんな熱さです。高性能住宅の全室暖房のパネルヒーターの表面温度はぬるま湯に触るそんな熱さなのです。
そういう訳で室温が同じ20℃前後の暖かさであった場合には建物の
断熱、
気密性能のある程度の良し悪しは、このパネルヒーターの表面温度の高い、低いで判断できるのです。
そこで、
断熱と
気密性能も調べることしました。
しかし、
気密測定器も熱カメラも持ってきていませんから、目視で判断しなければなりません。
そこで天井と床下に潜って調査することにしました。

これは天井の
断熱材(GW200mmのブローイング吹込み)ですが指を差している部分は間仕切間の隙間部分(気流止め)です。防湿シートを張っているものの、隙間部分の先張りシート(気流止め)がないことと、接合部はテープなしですからスカスカの低
気密住宅になっています。

どの部分かというと、左の薄ブルー色の部分上が2Fの間仕切部分(
気密住宅でない場合は、この隙間にGWを折り曲げて気流止めにすることになっています。)下の部分は1Fの間仕切間の先張りシートを表しています。
その先張りシートがない訳ですから、この間仕切間は煙突状態になって、外気が走っていることになります。
当然この間仕切には室内ですから
断熱材は充填されていません。気密シートは全体に施工してあるものの、接合部のテープ処理が一切ないようなので、気密測定をしても測定不可になることだと思います。

同じく、こちらは床下の土台付近です。
赤線で示している部分に土台先張りシートがありません。
床下にはプラスチック系
断熱材があって、その上に気密シートがあるものの、外壁側のシートと床のシートとは接合部にテープ処理もない状態です。(黒くなっている所は内部
結露発生で土台にカビが発生しています。)
カビの発生原因はこの部分を見てもわかるように
気密住宅ではなく、低気密住宅なため隙間があちこちに点在し、あちらこちらの隙間、特に吸気口の付近の隙間から多く給気されているため、せっかくの計画換気の換気経路が計画通りにならず、パッコン(給気口)から外気を入れることができなく室内の空気が滞留しているのです。
(例:ストローが気密住宅とすれば、吸う方と吸われる口が1個なので給と吸が明確ですが、そのストローの途中にに針の穴が無数に空いていた場合は、先端の口からは100%の給気ができません。その状態がこの現場には見られるのです。)
だから給気量はゼロ?(0m3/h)だったのです。
ということで結論!!
カビの発生(特に和室の畳の間仕切~外壁廻りの畳に多く発生)は低気密住宅であるがため、換気ルートが切断され空気が滞留、また断熱材の施工不良による内部
結露~表面
結露の発生~カビの発生と連鎖的になったことが原因でした。
しかし、このことをゼネコンの建築部長に後日書類で報告しましたが建て主様に報告されているか疑問です。また有名な設計事務所の設計監理なのに監理されていないのも疑問。
「参考」気流止めの方法
↓ ↓
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tag : 結露新築断熱気密換気